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声が届く場所——NPO法人あいだ理事・奥野大地が語る、PODCASTと「貧困の再定義」
声が届く場所——NPO法人あいだ理事・奥野大地が語る、PODCASTと「貧困の再定義」
「声の向こうにいる人のこと。」:NPO法人あいだ 奥野 大地

NPO法人あいだの理事であり臨床心理士の奥野大地さん。彼がパーソナリティを務めるPODCAST「あいだラジオ by NPO法人あいだ〜わけ合えばあまる〜」は、3年以上にわたり100本を超えるエピソードを重ねてきた。文字では伝えきれないテーマを、声に乗せて発信する意味とは何か。今回のインタビューでは、情報発信の原点から、番組がもたらした思わぬ変化、そしてNPOと個人の両面で動き出した新しい挑戦まで、奥野さんが率直に語っている。

文字の重さを越えて、声が届くまで

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NPO法人あいだの活動を社会に伝えようとするとき、奥野さんはいつも同じ壁にぶつかっていた。伝えたいことはある。しかし、それを文字にしようとすると、どうしても重くなってしまう。

「情報発信は必要だとわかっていたのですが、紙や文字で書き始めると面白くなくなってしまう。トピックが重すぎて、真面目に書けば書くほど読む人は限られてしまう。そう感じながら、なかなか筆が進まなかった」

NPO法人あいだが扱うテーマ——貧困、子どもの居場所、社会的孤立——は、短い文字情報では伝わりにくく、かといって長文を書ききる余力もない。そんな行き詰まりの中で、音声配信という選択肢が浮かんだ。「ネタはたくさんあるし、嬉しいです」という感覚で始まったと奥野さんは振り返る。書くことの苦労から解放され、話すことの自然さに乗っかる形で、「あいだラジオ」は産声を上げた。

PODCASTというメディアが持つ「ながら聴き」の特性は、Lifebloom.funでも番組制作を通じて実感してきたことだ。声は、画面を見ていなくても届く。その特性が、重いテーマをかえって身近にする力を持っている。

3年、100本超——相棒がいたから続いた

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番組がスタートして3年以上が経ち、エピソードは100本を超えた。この継続を支えてきた最大の要因として、奥野さんが真っ先に挙げるのは、パーソナリティを共に務めるNPO法人あいだの理事の寺田絢香さんと、Lifebloom.funのトーマス・J・トーマスの存在だ。

「2人が出てくれていなかったら、こうはなっていなかったと思います。3ヶ月ほどで挫折していたでしょう」

NPO法人あいだの内情について理解しており、シングルマザーという立場で番組に関わってくれる絢香さんと、他の番組では見られないトーマスの問いかけや切り返しが、番組に独特のリズムをもたらしている。奥野さんが語り、トーマスが受け、絢香さんが和ませる——そのやり取りの中で、一人では引き出せなかった言葉が生まれてきたという。NPOの活動という、ともすれば重くなりがちなテーマが、三人の掛け合いによって親しみやすく、かつ本質的なものとして届く。この化学反応こそが、「あいだラジオ」の核心にある。

「貧困」を声で語ったとき、言葉が変わった

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100本を超えるエピソードの中で、奥野さんが特に印象に残っていると語るのが、NPO法人あいだの活動の根幹にある「貧困」の定義について語った回だ。

「”貧困とは”について語った回は、自分でも面白かった。このテーマをちゃんと言葉にするのは難しいのですが、ポッドキャストでは比較的言いやすかった」

経済的な困窮だけを指すのではなく、人と人と繋がりが断絶することこそが貧困の本質だという考え方。これは文字で書けば誤解を招きやすく、論文的な説明が必要になる。しかし声で、対話の中で語られることで、その意味のグラデーションがリスナーに自然に伝わる。奥野さんが「言いやすかった」と感じたのは、音声というメディアが持つそういった特性ゆえだろう。

臨床心理士としての専門的な視点から心の健康や人間関係について語るエピソードも、再生数が好調だという。専門知識を堅苦しくなく、しかし本質を外さずに届けること——「あいだラジオ」はそのバランスを、声の力で実現している。番組の詳細は、あいだラジオ by NPO法人あいだ〜わけ合えばあまる〜の番組ページで確認できる。

喋ることで、思考が整っていった

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3年以上にわたって番組を続けてきた中で、奥野さん自身にも変化が生まれた。それは、自分の「喋り」が整理されていったという感覚だ。

「PODCASTを続けていると、喋りが整理されていきました。自分が求めているお客さんはこうですと、スパッと言えるようになってくる。言うべき情報と、面白さを加える情報のバランスも意識できるようになって、発信が洗練されたと感じています」

話すという行為を繰り返すことで、自分が何を伝えたいのかが明確になっていく。これは、ポッドキャストが単なる情報発信ツールではなく、話し手自身の思考を鍛える場でもあることを示している。

さらに奥野さんは、この経験がNPO法人あいだのスタッフ教育にも応用できると語る。代表の考え方を音声で届けることで、組織全体に理念が浸透していく——特定の企業がPODCASTを社内教育に活用している事例を引き合いに出しながら、「あいだラジオ」がそうした役割を担う可能性にも言及した。「スタッフが増えていったら、あいだラジオが社内教育ツールとして使えそうですね」という言葉には、番組の可能性をまだ広げようとしている奥野さんの姿勢が表れている。

「聴いてる」とは言わずに、内容を口にする人たち

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PODCASTのリスナーとの関係は、SNSのフォロワーとも、メルマガ読者とも少し違う。奥野さんはその独特の距離感を、こんなエピソードで語ってくれた。

「番組で話した内容を、聞いているとは言わずに口にする人がいるのです。『こんなことを言ってましたよね』と。お前、言えよ、みたいになりますよね」

直接「聴いています」と言わなくても、番組の言葉が日常の会話の中に自然に溶け込んでいる。それは、リスナーが情報を受け取るだけでなく、自分の言葉として消化していることの証だ。PODCASTが持つ「親密性」——耳元で語りかけるような感覚が、こうした静かな影響力を生み出している。

奥野さんは、第134回で「親密性」について語ったエピソードに触れながら、「ちゃんと宣伝しなきゃいけないな」と苦笑いしていた。番組の存在をもっと積極的に周囲に伝えることへの反省も、正直に口にしていた。

「言っちゃったからやらなきゃ」という使い方

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「あいだラジオ」は、奥野さんにとって情報発信の場であるだけでなく、自分自身を動かすための「旗」としても機能してきた。

「番組の中で宣言することで、言っちゃったからやらなきゃという状況に自分を追い込む手法があるでしょう。それを使っています」

公言することで退路を断ち、行動に移す。PODCASTという公開の場を、自己コミットメントのツールとして活用しているのだ。

また、名刺交換後の挨拶メールにPODCASTのリンクを添えることで、相手に奥野さんの人柄や活動を深く知ってもらうきっかけにもなっている。「名刺交換すると秘書さんが名刺の写真をメールで送ってくれるのですが、その挨拶メールの中にPODCASTもやってますよと書いてあるので、そこから一度二度聴いてくれる人はいたはずです」と、具体的な活用の場面も語ってくれた。

さらに、番組の音声をメルマガとして展開したり、文字起こしをAIで要約して記事化したりと、コンテンツの多角的な活用も進んでいる。一度収録した音声が複数のメディアで生き続ける——PODCASTが持つ「資産性」を、奥野さんは実践的に活かそうとしている。

新代表として、認定NPOへの道を歩む

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NPO法人あいだは、奥野大地さんが代表に就任したことで、新たなフェーズに入った。その一つの目標が、「認定NPO法人」の取得だ。

前代表の時代には、すでに確立された社会的信用があったため、認定取得の必要性は低く、むしろ手続きのコストがデメリットと判断されていた。しかし状況は変わった。

「前代表のうちは社会的信用がすでにあったので、認定になる必要は全くなかった。でも私はまだ、お前誰やねんという話ですから」

認定NPO法人になるためには、寄付金の要件を満たすだけでなく、書類の整備や定款に沿った活動の記録など、地道な手続きが求められる。「この辺はね、良くないね」と自ら認めながらも、NPOとしての信頼性を高めるために必要なステップとして向き合おうとしている。

また、児童向けシェルター「すだちの木」のような施設をもう1〜2箇所増設したいという意向も語ってくれた。記録のオンライン化や、複数施設をつないだ朝の合同申し送りミーティングの導入など、多店舗展開を効率的に行うための仕組みづくりにも着手している。「前まではお金的なメリットしかないと思っていたから、それだけのためにやるのはどうかと思っていた。でも手間をかけずにできるのであれば、やった方がいい」と、考え方の変化も率直に話してくれた。

レッドオーシャンを避けて、海を渡る

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NPO法人あいだの活動と並行して、奥野さん個人としても新たな挑戦が動き出している。「株式会社 こころを耕す」の設立と、海外在住者向けのオンラインカウンセリング事業だ。

海外に住む日本語話者をターゲットに、専門性の高いカウンセリングを提供していく。「海外在住者に特化することで、異国の地で活躍する方の心に寄り添いながら、地理的な制約をマーケティング的な強みに変える」と奥野さんは語る。

この構想は2年以上前から温めていたものの、多忙を理由に蓋をしてきたという。「あまりにもやりたさすぎて」という言葉に、長年の思いが滲む。個人事業から法人化するタイミングで、ついに動き出すことにした。個人事業のままでは、万が一の際に通帳が凍結されて給与が払えなくなるリスクがある——そうした現実的な課題も、法人化を決断した理由の一つだ。「そんなことに気づかずに12年もやってしまった」と苦笑いしながらも、次のステップへの意欲は確かなものだった。

定款に書いた「情報発信」、PODCASTが救った

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NPO法人あいだの定款には、「今困っている若者がどうであるか」といった情報発信を行う事業が明記されている。これはNPOとして社会に果たすべき義務であり、当初はメルマガなどの文字媒体を想定していた。

「定款に情報発信をする事業が書いてあって、それをやる必要があるのです。メルマガを想定して定款に入れたのですが、いざ蓋を開けてみると、書く側が大変すぎて」

ライターに依頼してもニュアンスが違ってしまう。自分で書こうとすると筆が止まる。そんな行き詰まりを、PODCATが解決した。話すことは、奥野さんにとって「気楽」なのだ。

「PODCASTの方が気楽。そこに尽きます」

義務として課された情報発信を、気楽に続けられる手段で果たす。このシンプルな一致が、「あいだラジオ」の継続を支えてきた根本にある。声の温度感をいかに残すか——Lifebloom.funが音声コンテンツの編集で大切にしている問いと、奥野さんのこの実感はどこか重なる。書き言葉では削ぎ落とされてしまう「話し手の息遣い」が、NPOの活動を広く知っても

タグで探せる番組へ——リスナーと育てる次のかたち

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Lifebloom.funへの期待として、奥野さんが最初に挙げたのは、エピソードへの「タグ付け機能」の導入だった。

「バックナンバーをリストするページで、タグで検索できるとありがたいのです。例えば『子育て』といったタグをエピソードにつけて検索できるようにしてもらえると、使いやすくなります」

取材を受けた際に「このタグで検索して何本か聞いてください」と案内できる——そんな使い方を想定しての要望だ。エピソードが100本を超えた今、過去の音声をどう届けるかは、番組の資産を活かす上でも重要な課題である。

もう一つ、奥野さんが言及したのがDiscordコミュニティの活用だ。リスナーがステッカーの到着を写真付きで投稿したり、番組の感想を共有したりする場として、Discordはすでに動き始めている。「そこに反応してもらえると嬉しい」という奥野さんの言葉には、リスナーとの距離を縮めたいという思いが込められている。

「あいだラジオが盛り上がること、リスナーたちが熱くなってくれること——それが最終的なゴールです」

Discordでのやり取りが活発になれば、それを見た他のユーザーが番組を聴き始めるきっかけにもなる。コミュニティの熱量が、番組の広がりを生む。奥野さんはその循環を、静かに、しかし確かに期待している。


NPO法人あいだは、平成30年に設立された埼玉県のNPO法人だ。児童向けのシェルターや子ども食堂など、主に子ども・若者へのサポートを提供している。奥野さんは、その活動の本質をこう語る。

「困っている人を助けることは、それぞれみんな頑張っています。当法人としては、助ける人を増やしましょう、という考え方です。助ける側が助ける側に回りやすいための方法をいつも考えて、面白おかしくやっています」

声で語ることで、重いテーマが少し軽くなる。対話の中で、言葉が本来の意味を取り戻す。奥野さんが3年以上かけて積み上げてきた「あいだラジオ」の時間は、そういう確信の積み重ねでもある。今回のインタビューで語られた奥野大地さんの言葉の続きは、ぜひ番組でご聴取いただけたら幸いだ。

NPO法人あいだ

NPO法人あいだ

NPO法人あいだは、「心は人と人とのあいだにある」を理念に掲げ、子どもや若者の自立と居場所づくりを支援する団体です。自立援助ホーム・シェルター「すだちの木」、中高生向けの学習支援フリースクール「てらこ」、移動式子ども食堂「あい♡だいな〜」などの活動を展開しています。支えを必要とする人々と地域をつなぎ、一人ひとりが安心して未来へ歩み出せる温かい関係性を育んでいます。

WEBサイト:https://npoaida.org/