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「本音」で書く、その先に見えるもの——松三詠さんが語る本音ライティングと声の力
「本音」で書く、その先に見えるもの——松三詠さんが語る本音ライティングと声の力
「声の向こうにいる人のこと。」:松 三詠

ポッドキャストの平均視聴時間は30分を超えることも珍しくない。SNSのタイムラインを流れる数秒の動画とは、時間の密度がまるで違う。その長い時間をリスナーと共有するからこそ、表面を取り繕った言葉はすぐに薄さを露わにする。そう語るのは、ポッドキャスト「心の起業学」の配信者であり、著書『SNSフォロワー1000人以下でも濃いファンができる発信術 本音ライティング』の著者、松三詠さんだ。今回のインタビューでは、出版の裏側からポッドキャストが自分の発信を変えた経緯まで、じっくりと語ってもらった。

「思ったことを書くのでいい」という気づき

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出版から1年ほど経った今、読者からどんな声が届いているかを尋ねると、三詠さんは少し間を置いてから答えた。

「本音で書くという意味がわかった。『思ったことを書けばいいんだ』と気づく事ができた、という声が多いです」

SNSをビジネスや活動のために使っている人が主な読者層だという。売れようとして書くと「みんなと同じような投稿になってしまう」。かといって私生活をすべてさらけ出すタイプでもない。文章コンサルに「自己開示をしましょう」と言われても、それが苦手でどうにもならない。そういう人が手に取り、「こんなことでいいんだ」とハードルが下がったと言ってくれる、と。

もうひとつ、意外な感想として多く届くのが「癒された」という声だ。「ライティングの本だと思って読んだら、なぜか癒された。後半はライティングの本だけど、前半は自分発見の本ですよね」という反応が、本屋のジャンル分けを超えて届いているらしい。書店によってはウェブ構築やSEO関連の棚に並ぶこともあれば、SNSや文章のコーナーに置かれることもある。それでも「メンタルに効く本ですね」という感想が繰り返し届く。タイトルが示す以上の何かが、この本には込められているということかもしれない。

テクニックの手前にある問い

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「言語化」という言葉が定番化して久しい。ビジネス書でも自己啓発書でも、言語化は必須スキルとして語られる。三詠さんはそこに、少し違う感覚を持っている。

「語彙力や言語化力を無理に高めなくても、思ったことをそのまま書けばいい。私はそう感じています。言葉は言い尽くすものではない。ライティングの本を出しながら、テクニックに走るな、というのがメッセージかもしれません」

本書が目指すのは、「うまく書く」ことではなく、「何を書くか」に気づくことだ。自分の経験から生まれた言葉は誰とも違う。「自分だけのものだし、AIにはそれは絶対に書けない」と三詠さんは言い切る。テクニックを覚える前に、自分が何を言いたいのかを知ること。その順番が逆になっているから、多くの人が発信に詰まってしまうのだと。

「何を書いたらいいのか、私は誰なのか、何を言いたいのか。そこに気づければ、それを書けばいいだけなので、むしろテクニックはいらないのです」

もちろん、本書の後半には三詠さんオリジナルの文章を書くためのメソッドも収録されている。前半で自分を掘り下げ、「あ、私こういうことを言いたいんだ」と気づいた後に、その型を使うことで「スルスル書けるようになる」という構成だ。テクニックを否定しているのではなく、テクニックが活きる土台を先に作ることを大切にしている。

書けば書くほど「まだ表層だ」と気づく

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執筆中に一番苦しかったことを聞くと、三詠さんは「ありすぎて」と笑った。

「書けば書くほど、まだ表層だと気づく。10行書いた内容にも、まだ上に積めるはずがある。1行に濃縮すれば、もっと深いところがあるはずだ、という感覚の繰り返しでした」

夜に書いて、朝起きると「あ、そうだ」と気づいて書き換える。それが永遠に終わらない感覚だったという。初めての著書ということもあり、メルマガとは違う「構え」があった。しかしその気負いが、「本当に本当に深層にあることを伝えたい」という気持ちに変換されていった。

「何度も書き直して、今の形にたどり着けた、という実感はあります」

本書で説かれている「本音を深掘りする」プロセスを、著者自身が執筆を通じてそのまま体験していた。その事実が、本の言葉に独特の重みを与えているのかもしれない。

出版への道:偶然が重なった半年

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「いつからかわからないぐらいずっとあった」という出版への思いは、起業して10年の間、ずっと三詠さんの中にあった。周りに本を出す人が増えるたびに、その気持ちは強くなっていった。

動き出せたきっかけは、「本を出したらいいよっていう出来事が立て続けに起こった」ことだったと振り返る。数十万円の出版塾に入ったものの一度も活用できなかった過去もある。しかし企画書を出す半年ほど前から、「本当にただみたいな値段で学べる出版塾が突然現れて」参加したり、身近な知人が初めての著書でスマッシュヒットを出したりと、背中を押す出来事が続いた。

「事例が目の前に現れるのは、やりなさいと言われているのかもしれない。」

企画書を書いて送ったのは5月。何も音沙汰がなく「ダメだったんだな」と思っていたら、12月に突然「プレゼンできますよ」という連絡が届いた。別の出版オーディションでは予選も通らなかった。それでも、一度決まってからは「すごい早かった」という。

この出版までの道のりは、心の起業学でもリアルタイムで語られていた。リスナーは三詠さんの苦労と喜びを、ほぼ同時進行で聞いていたのだ。

企画書と完成形がほぼ同じだった理由

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「企画書と本がほとんど同じです。タイトルも構成も、最初の企画書のまま。その通りになるとは思いませんでした」

一般的に、編集者との話し合いで企画書の内容は大きく変わることも多い。三詠さん自身もそのつもりだったが、声をかけてくれた出版社は「著者の企画をそのまま活かす」雰囲気があったと言う。

ただし、構成は変わらなくても、中身は別の話だった。「企画書に書いた章立てや見出しは、その時点では自分の中で確かにイメージできていたものです。ですが、中身まではまだ詰めきれていませんでした」。実際に書き始めると「どうしよう」という場面が何度もあり、見出しは大幅に変えた。

「書いてみて、やっとこの本の正体が見えてきた、という感じです」

企画書は著者の「本音」を凝縮したものであり、執筆はその本音を掘り起こしていく作業だった。そう考えると、この本の構造自体が、本書のメッセージと重なって見えてくる。

PODCASTが引き出した「言うつもりじゃなかったこと」

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PODCAST「心の起業学」を始めたのは、三詠さんにとって「自分の中でいろいろ変化があって、何か自分が今まで出してきたものと違うものを伝えていきたい」という気持ちが大きくなっていた時期だった。それまでメルマガなど「書くこと」をメインにしてきた彼女が、「話すとかライブするとか、そういうことがいいな」と感じていたタイミングで、ナビゲーターのトーマス・J・トーマスとの出会いがあった。

PODCASTで話すことで、「今まで出してなかったものが出せるようになった」と三詠さんは言う。その感覚が、著書の内容にも繋がっているという。

「トーマスさんから思いがけない質問を受けて、言うつもりのなかったことを口にしてしまうことがある。自分では『言っちゃったな』と思うのですが、聴いている方にはそれが面白いのだと思います」

台本に縛られず、テーマに沿って「掛け合って喋ってる状態」が、リスナーに届く「本音」の核になる。Lifebloom.funのPODCAST編集でも、声の温度感をそのまま残すことを大切にしているが、三詠さんの言葉はその感覚と自然に重なる。しっかり作り込まれたコンテンツの良さはある、と三詠さんは認めながらも、「そればっかりだと聞いてるほうも疲れる」とも言う。「気楽に聴けて、気分がよくなったり、ヒントになったりするものを、リスナーは求めているのだと思います」。その言葉は、PODCASTというメディアの本質を静かに言い当てている。

声が消した「意外とラフなんですね」

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「話すと、やはり素が出てしまいますよね」

PODCASTを始める前、メルマガ読者の方から「みえさんって、意外とラフなんですね」と言われることが多かったと三詠さんは振り返る。良い意味でのギャップではあるが、文字だけでは伝わりきらない部分があったということでもある。

PODCASTを始めてから、その言葉を言われることがなくなった。声を通してキャラクターや雰囲気をすでに知っているリスナーが、面談に来るようになったからだ。

「ギャップがなくなった。お互いの期待値のずれが少ないので、自分も話しやすい。それでもいい、という話し方を聞いて共感してくれる方が来る。それはとてもありがたいことだと思います」

PODCASTは、配信者が自分らしくいられる場所であると同時に、リスナーとの間に「ギャップのない信頼」を育てる場でもある。三詠さんの経験は、その効果を具体的に示している。

サブカルコーナーが伝えた「この人のルーツ」

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「心の起業学」には、毎回最後に数分間の「サブカルコーナー」があった。三詠さんが好きな映画や本、アニメを紹介するコーナーで、ビジネスの話とは少し外れた「横顔」が見えた。

「好きなことを自由に話せる場なので、とても楽しいです」

ナビゲーターのトーマス・J・トーマスも、このコーナーで紹介された映画を実際に観たり、本を読んだりしたという。紹介されるコンテンツにはビジネスにも繋がる視点が含まれることも多く、「みえさんがどんなものでできているかがわかるだけで、少し近づける感じがした」と語る。

三詠さんは「立体的に、その人のことが見えてきます」と言う。15分という尺の中の最後のワンコーナー、数分の枠だからこそ、「自然に『こういう面もあるよ』という部分を入れやすい」。AIがどんな情報でも生成できる時代に、「自分らしさやキャラクター、生き様といったものを、出していかなければいけない」という本書のメッセージは、このコーナーの存在そのものとも重なっている。

自己理解が「なんであなたが?」を消す

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「サービスや講座、商品と、自分の人柄や人生は一致していなければいけない」

三詠さんは、普段まったく子育ての話をしない人が突然「子育て講座やります」と言っても「え?」となる、という例を挙げる。極端な話だが、それに近いことを多くの人がやってしまっていると指摘する。講座やサービスに込めたメッセージや自身の経験を、なぜか表に出してこない。だから「なんであなたが?」となったり、情報の海に埋もれてしまったりする。

だからこそ、自己理解が大切になる。過去の経験を深く掘り下げ、今の視点から意味を捉え直すこと。ネガティブな記憶の方が浮かびやすい人間の性質に触れながら、三詠さんはこう言う。

「たとえば、家族との関係で悲しいことがあった記憶なら、まずは、その時の自分に寄り添うことが大切。その上で、新しい視点からできごとの意味を捉え直していくと、本当の意味で癒やされていく」

自分の人生を肯定できるようになると、発信する際の言葉もスッキリしたものになる。「人格者になれ、という話ではなく、自分をちゃんと受け止められている、『自分ってこうなんだ』と言えることです」。自分を愛し、明確な意図を持って言葉を届けられるようになる。それが、『SNSフォロワー1000人以下でも濃いファンができる発信術 本音ライティング』が目指す、発信の根っこにある変化だ。

本音は一つじゃない、矛盾があっていい

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「本音」という言葉は、ときに「究極の一つの答え」を探させてしまう。しかし三詠さんは、本音はいくつもあっていいし、矛盾していてもいいと言う。

「楽したいのも本音だし、お金が欲しい、というのも本音です。そこを自分で認められれば、もういいのかなと思います」

「稼がなければ」「自分を高めなければ」という思いに蓋をして、表面的な目標だけを掲げている人は多い。そもそも「願いを叶えたい」というその願い自体が、本当に自分のものかどうかも問い直す必要があると三詠さんは言う。年収や物質的な豊かさへの憧れが、実は社会的な期待に乗っかったものだったりする。

「本当の自分の思っていることをちゃんと自分が知っておいて、それに従って生きることが大事だと思っています。それの入り口になるような本だといいな、と」

本書を「ライティングの本」として手に取った人が、気づけば自分の声に耳を澄ませている。そういう読後感を、三詠さんは静かに目指している。

「リラックスして自分を伝えられる場所」

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PODCASTとはどういう存在か、と最後に聞いた。三詠さんは少し考えてから答えた。

「一言で言えば、リラックスして自分を伝えられる場所です」

YouTubeやInstagramのライブでは、顔を映さなくても映像が伴う。表情、身振り手振り、服装、背景。意識しなければならないことが増える。声だけのPODCASTは、そうした要素をすべて取り払ってくれる。

そして三詠さんは、PODCASTが特に向いている人として、「コンテンツ力が弱いかもしれない」と感じている人を挙げた。専門性やオリジナルメソッドがまだ明確でない、キャラクターが立っているわけでもない、と自己評価が低い人。

「しゃべっているうちに言葉が出てくる。ナビゲーターがいればテーマに沿った対話になるので、話しているうちに『私はこんなことを思っていたんだ』と気づける」

リスナーからの質問に答えるうちに、それが自分のメソッドになっていく。一人でコンテンツを考えていると「堅苦しいものになってしまう」が、人と話すことで自然に引き出される。その感覚は、三詠さん自身がPODCASTを通じて経験してきたことでもある。もちろん、コンテンツが豊富でいっぱい話したいという人は「すぐやったらいいと思う」とも言う。ただ、そこにまだ行けていないと感じている人にこそ、話しながら自分を発見していくプロセスが向いているのだと。


松三詠さんが語った言葉の中で、繰り返し浮かび上がってきたのは「自分が自分の思っていることを分かってあげる」という視点だった。発信のテクニックでも、フォロワー数でもなく、まず自分の声に気づくこと。それができれば、書くことも話すことも、自然と変わっていく。

著書『SNSフォロワー1000人以下でも濃いファンができる発信術 本音ライティング』には、その気づきへの入り口が丁寧に用意されている。さらっと読めば1時間ほど、ワークに向き合えば何度でも使い込める一冊だ。三詠さんの「本音」が積み重なってきた場所。PODCAST「心の起業学」の音声は、この記事とあわせて、ぜひ聴いてみてほしい。